あなたが大事な取引先に向かっているとします。あなたの乗った特急電車は、順調に動いており、このままならば定刻に先方の最寄り駅に着きそうでした。ところが、ついうっかりして、目的の駅に着いていたことに気づかず、電車は発車してしまいました。特急なので次の停車駅は、50キロ先です。あなたならどうしますか。
今年1月、現実の世界で、同じように電車を乗り過ごした人がいました。この人は、検察官でした。長野県松本での裁判ため特急に乗ったが、松本駅で乗り過ごしてしまいました。この検察官、何を思ったか、乗務員に頼み込んで、特急を停め、そこで降りてタクシーに乗って、裁判所に向かいました。結局、裁判には間に合ったようです。
日本の電車の運行は、世界一正確だといわれています。当然、お客さんの勝手な都合で、本来通過するはずの駅に停車してあげるなんてしません。一人一人のわがままに付き合っていたら、皆が電車を緊急停車しろと言い出して収拾がつかなくなります(件の検察官も本来なら次の停車駅で降りて引き返さなければならないところでした)。
もっとも、本当に緊急の場合には、当たり前のことですが、緊急停車は認められます。たとえば、急病人が出たなど、人の生命・身体に影響が及ぶような場合がそうです。病人の場合以外ですと、受験シーズンに不慣れな受験生が電車を間違ったり、乗過ごして電車が緊急停車したニュースを耳にした方も多いのではないでしょうか。
どのような緊急停車を認めるべきかについては、具体的な基準はないようですが、世間的には受験生のケースでは同情的なようです。将来がかかっているので、子供には大目に見てあげているということでしょう。その一方で、昔、参議院議員が新幹線を乗り過ごし通過駅に緊急停車させた時には、世の中の非難が集中しました。
今回の検察官の件はどうでしょうか。まず、裁判に遅れると、裁判官や被告人を待たせることになります。また、審理時間が短くなってしまいます。もっと遅れると、別の期日を取らなければならないという問題もあります(被告人が身柄を拘束されている期間もその分長くなる)。このように、検察官の遅刻は社会には迷惑なものです。
しかし、だからといって電車を停めてもよいのでしょうか。良い大人なのだから時間管理は自己責任ですし、緊急停車すれば、今度は他のお客さんが迷惑します(それが原因で重要な案件に遅れるかもしれない)。民間人であれば、「大事な取引先との予定に遅刻しそうだから特急を止めてくれ」などというのは通用しないと思います。
先日、鳩山法務大臣は、「裁判で有罪にならないかぎり冤罪じゃないというのが検察の考えだ」という趣旨の爆弾発言をしました。考えたくもありませんが、こんな非常識な世界で仕事をしていると、「自分は大事な仕事をしているのだから電車ぐらい止めるのは当り前」なんて思ってしまうのかもしれません。皆様、どう思いますか。